糖尿病になったけど、自分は症状がないから大丈夫と言われることがありますので、説明します。
糖尿病とは血糖値(血液中の糖分)が慢性的に上がることで、全身の血管がいたんでしまう病気です。糖分とは、甘いものだけでなく、お米、パン、麺類、いもなどの炭水化物のことですので、甘いものの取りすぎだけが原因ではありません。糖尿病といわれる理由は、正常の血糖値では尿に糖分が出ることはありませんが、血糖値が異常に高くなると尿に糖分が漏れ出して、尿が甘くなることからきています。
平成28年の統計では、日本国内では糖尿病が強く疑われる人が約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1000万人いると推定されています。糖尿病には原因が2種類ありますが、今回は大部分をしめる2型糖尿病について説明します。まず血糖値のコントロールのしくみについて説明します。まず食事などで糖分を取ると腸から吸収され血液中の糖分(ブドウ糖)が増えます。血液中の糖分はインスリン(膵臓から出るホルモン)により肝臓や筋肉などに移動し、血糖値が下がります。2型糖尿病とは、遺伝(体質)や過食、運動不足など血糖値が上がりやすい状態、つまりインスリンを過剰に出さなければならない状態が続くと、インスリンをつくる膵臓が疲れて弱ってしまうことでインスリンが出にくくなったり、肝臓や筋肉などの細胞がインスリンの働きに鈍感になったりして、血糖値を下げることができなくなってしまった状態です。
糖尿病になっても患者さんが自分は大丈夫と考えられる理由は自覚症状がないからです。血糖値はまれに非常に高くなると意識を失うことはありますが、ある程度までは異常に高くなっても全く自覚症状はありません。糖尿病による障害は、言葉は適切ではありませんが、長い潜伏期間のような時期があり、おおざっぱに言うと、高血糖×続いた年数があるラインをこえるとおこってくると考えられています。血糖値が高ければ高いほど早い段階で症状をおこしてきます。高血糖が5年以上続くとまず手足のしびれなどの神経障害がおこり、10年以上続くと腎臓に障害をおこしてきます。目に関しては、5~10年で網膜症をおこしてきますが、初期のほとんどの方は無症状で、かなり進行していても自覚症状が全くない場合もあります。自覚症状が出た時点では手遅れに近い状態の場合もありますので、自覚症状が出る前から診察を受ける必要があります。目の症状については、次のブログで説明します。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善