医師に結膜炎と言われた場合にどうしていいかわからない患者さんがおられると思いますので説明します。
一般の方が考えられる結膜炎とは、「流行性角結膜炎(はやり目)」という、流行性に人にうつる結膜炎のことだと思われます。しかし、眼科で結膜炎を正確にいうと白目の表面(眼球結膜)とまぶたの裏(眼瞼結膜)の炎症で、流行性角結膜炎の他にもいろいろな種類があります。アレルギー性が最も多く、次に細菌性、その次にウイルス性(主に流行性)の頻度です。結膜炎の症状としては白目もしくはまぶたの裏の充血とメヤニです。アレルギー性の結膜炎がはっきりしている場合には、医師は「アレルギーです」という場合がほとんどと思いますので、医師が「結膜炎です」といった場合は、1,流行性角結膜炎、2,原因がはっきりしない結膜炎の二つが考えられます。人にうつるかもしれないから気を付けてと言われたら、流行性の可能性があると思われます。実は結膜炎の診断はあいまいで、特徴的な所見やアデノウイルス検査(涙を取って調べる)で確定できなけば、流行性か、それ以外の原因の結膜炎かをはっきり診断することはできません。ですので医師としてもはっきり言えないので「結膜炎」とあいまいに言ってしまうということもあると思います。大事なことは、人にうつったり、学校を休まないといけなくなったり、まれに視力障害を残すことがある流行性かそうでないかだけを判別することですので、その方法について説明します。
まず一つ目は、流行性の結膜炎に特徴的な所見(耳の前のリンパ節のはれ、結膜の点状出血、角膜の混濁)があるかを診察でみることです。これらの所見があればほぼまちがいなく流行性です。リンパ節のはれは自分でわかることもありますが、結膜の点状出血と角膜の混濁は、眼科で顕微鏡の検査をしないとわかりません。
次に、これらの所見がない場合は、アデノウイルス診断キット(コロナの抗体検査みたいなもの)を用います。この検査は陽性であればほぼ間違いないですが、陰性でも違うとは言い切れないというもどかしい検査です(コロナでも同じですが)。近年精度が高い機械が発売されており、当院でも導入しております。
それでも診断がつかなかった場合は、目薬をさしはじめてから症状がよくなるかどうかをみること(診断的治療)です。流行性角結膜炎は目薬で症状が改善することはなく、自然に治るのを待つことになります。それに対し、細菌性やアレルギー性は、目薬で明らかに症状が改善するので、目薬をはじめた後、数日で効果があれば、流行性ではない可能性が高いと思われます。充血・メヤニなどの症状が完全になくなった時点で眼科を再度受診していただければ、治ったと診断してもらえると思います。
次回は流行性角結膜炎の問題点について説明します。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善