ドライアイのいろいろな治療を試しても一向に症状が改善しない場合、ドライアイ以外の病気を疑う必要があります。今回は結膜弛緩と眼瞼けいれんについて説明します。
まず結膜弛緩(しかん:ゆるむという意味)とは、白目の表面の皮(球結膜)が加齢などによりゆるんでのびた状態です。正常であれば、眼球とまぶたの境には水がたまるところがあり、そこにたまった水がまばたきするたびに、眼球の表面に塗りつけられ、乾燥を防いでいます。結膜弛緩があるとその水がたまるべきところがゆるんだ結膜により占領され、乾燥した状態になりドライアイや逆に涙が出たりといった症状を起こします。治療はゆるんだ結膜を切り取ったり、電気で焼いたりすることで縮めます。ただし結膜弛緩は高齢の方にとってはめずらしい状態ではなく、自覚症状がほとんどないことの方が多いのです。逆に治療したからといって症状が必ず改善するものでもなく、治療するべきかどうかは悩ましい場合もあります。
次に眼瞼けいれんとは、まぶたの神経が過敏になり、ドライアイの症状に近い目の違和感を感じたり、目が勝手に閉じたりする病気です。けいれんという名前がついていますが、はっきりしたけいれんが見られないことが多いです。今のところ原因ははっきりしていませんが脳の病気です。この病気は比較的まれで、見慣れていても見逃すことがあり、ドライアイが治らないという方では一度は疑ってみるべき病気です。診断は自覚症状(質問票)とまばたき試験(まばたきを意識的にしてもらい、上手にできるかをみる)でつけることができます。治療はいろいろありますが、最も効果が高いのは目の周りにボトックス(筋肉の動きを一時的に止める)という薬を注射する治療です。ただしこの病気は診断がついたとしても症状を改善できるとは限りません。当院でもボトックス治療をしていますが、効果を感じずに治療を止めてしまったり、いろいろな病院を転々としたりする患者さんが後を絶ちません。この病気で眼科医が最も困るのは、白内障手術でこの病気が悪化する場合です。せっかく白内障の手術で目が見えるようになっても、まぶしくて目を開けられないといった状態になってしまうことがあります。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善