眼精疲労(疲れ目、目の奥の痛み、頭痛、首のこり、肩こり)の原因には環境の問題もあります。
一つ目は、昔と比べて見るものの距離が短くなっていることです。読書などは昔からあったかもしれませんが、ライフスタイルの変化により、手元を見て過ごす時間が圧倒的に長くなっています。極めつけはスマホの登場です。スマホは画面が小さく、手にもって使うために、人によっては20cm程度と目からの距離が極端に短くなっています。以前はテレビで見ていた番組や映画もスマホになり、SNSなど常に注目を強いる活字もスマホで見たり、余暇の大部分の時間をスマホで過ごすようになりつつあります。
近くを見ることの問題は、主に二つあります。一つ目は目のピントの問題です。以前のブログで示したように、
遠くを見るときは筋肉(毛様体筋)を使っていない状態→調節力0
2m先を見る→調節力0.5
1m先を見る→調節力1
50cm先を見る→調節力2
30cm先を見る→調節力3.3
20cm先を見る→調節力5
必要な調節力が大きいほど、目に負担をかけています。たとえばスマホを20cmの距離で見ることは、テレビの10倍?目の筋肉に負担をかけているかもしれません。
二つ目は、目の内よせ(輻輳)の問題です。近くのものを見る時には、ものが一つに見えるように、目が同じところを見るように、目を内側に寄せる(輻輳する)必要があります。
左右の目の距離は平均6.3cmですので、三角関数を使って計算すると、20cmの距離のものを両目で見るためには、片目ずつ約10度目を内側に寄せないといけません。この内よせを続けるということは、目を動かす筋肉(外眼筋)に負担をかけるということです。
この2点から、遠くのものをみるよりも、近くのものを見る時はかなり目に負担をかけることになります。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善