ドライアイが治らないと言われることがありますので、説明します。「治らない」という意味には2通りあります。
一つ目は、目薬をさしている間は調子がいいが、目薬を止めてしまうとまた症状がぶり返すという意味です。その意味では残念ながらドライアイは完全に治すことはできません。ドライアイの原因は、加齢、女性、乾燥した環境、スマホ・タブレット・パソコン作業、コンタクトレンズ、薬の副作用、目と体の病気などがありますが、自分でコントロールできないことの方が多いのがおわかりと思います。実際にはドライアイは涙自体が減ること、目の表面の油分がへることで涙が乾きやすくなること、涙が目の表面にとどまりにくくなること(水濡れ性)の三つが直接の原因と考えられています。これらのことを根本的に治すことはできず、不足している成分を補うための目薬などをさし続けた場合にのみ、症状をおさえることができるのです。
二つ目は、目薬などの治療をしても、症状が良くならないという意味です。前のブログ「ドライアイの症状は何でもあり?」で説明したように、目の症状の多くはとりあえずドライアイの診断に合うことが多いので、はじめはドライアイの治療を段階的にすすめていきます。まず最も効果が高く簡単な治療が目薬による治療で、現在よく効く目薬が主に3種類あります。その中の一つのヒアルロンサンは市販薬でも手に入れることができるようになりましたが、この3種類は患者さんによってかなり相性が違うので、3種類を別々に1か月ごとくらい試してみる必要があります。それでも効果がなければ、さらに別の目薬や軟膏を試してみます。それでも効果がなければ、涙の出る量を調べ、涙がほとんど出ていなければ「涙点プラグ」を入れる処置をするという流れになります。それでも効果がなければ、ドライアイ以外の原因を詳しく調べることになります。こちらについては別のブログでお伝えします。
このようにドライアイは、眼科を一回受診したらすぐよくなるというようなものではなく、継続的な治療が必要な病気です。 しかもドライアイは医師が診察で程度が軽いと判断した場合でも、患者さんの症状が非常に強いこともあります。ですから、医師に気を使うことなく、今の目薬では効果がないといったこともはっきり伝えた方がいいと思います。そうすれば医師は次の手を打ってくれると思います。 ですから、治らないからといって、すぐに別の病院にかえることはあまりおすすめできません。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善