白内障の多焦点レンズの見え方の原理について説明します。日本白内障屈折矯正手術学会のホームページで分かりやすく説明されていましたので、引用させていただきます。


野球観戦の時、ネット越しに野球をみている場合が、多焦点レンズの見え方に近いのではないかということです。本当はネットも見えているのですが、野球選手のプレーに集中していれば、ネットが気にならないわけです。つまり見たい方の野球選手にピントを合わせていて、ネットはぼけた状態になっていて、脳はぼけた画像を無視しているということです。このようなの脳のはたらきにより、多焦点レンズは、見たい方の画像を無意識に選んで、ものを見ているということです。
白内障の多焦点レンズは、つねに2つ以上の異なる画像が見えているので、それぞれの解像度は落ちています。つまり一つの画像自体の解像度は、単焦点レンズより落ちるということです。具体的にいうと、多焦点レンズでは、遠方が5割、手元が3割、中間が2割といった配分になっていることが多いです。単焦点レンズであれば、メガネをかけ替えることで、遠方、中間、手元が、10割の解像度で見えますが、多焦点レンズであれば、それが5~2割の解像度で見ることになります。
このことから、白内障の多焦点レンズは手放しでおすすめできるものではないことが、わかっていただけると思います。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善