目のピントが原因で眼精疲労(疲れ目、目の奥の痛み、頭痛、首のこり、肩こり)が起こる場合について説明します。
一つ目は遠視です。以前当ブログ「目がいい人と悪い人の違い<その1>」で説明したように、目の奥行きの長さによって、遠視か近視かはほとんど決まっています。遠視は「いい目」と思われていて、眼精疲労を起こすまで眼科受診をしない方が多いです。遠視の方は遠く~近くを見る時、常にピント調節をしているので、慢性的な疲労状態にあります。このため眼精疲労の原因になりやすいのですが、治療は困難です。その理由は三点あります。一点目は、メガネやコンタクトレンズ(以下メガネと略します)はよく見えるようにするものと考えられているので、眼精疲労を治すためとはいえ、良く見えているのにメガネをかけることに抵抗を持たれることが多いということです。二点目は、遠視の方は常にピント調節するくせ(ピントフリーズ)があるので、メガネをかけ続けることに慣れるまで(ピント調節のくせが治るまで)、メガネをかけるとかえってぼやけてしまうということです。三点目は、メガネによりものが歪んで見えたり、人から目が大きく見えたりするということです。ですから、眼精疲労の症状を治したいのであれば、しばらく我慢してメガネをかけていただく必要があります。
二つ目は、近視です。近視の方は、見えないことにコンプレックスがあるので、遠くが最大限に見えるメガネを希望されます。過矯正のメガネは非常にシャープに見えるので、そのように処方してしまいがちです。その結果遠視の方と同じようにピント調節が疲労し、眼精疲労になります。しかも、合わないメガネが原因で眼精疲労を発症するには、3~6か月の時間がかかるので、メガネの作り替えが原因と考えない方が多く、脳外科などを受診される患者さんもおられます。どうしても過矯正にしたい場合は、遠近両用レンズにして、手元を見る時の負担をへらすこともあります。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善