今回は白内障の手術はいつしたらよいかについて、私の個人的な考えをお伝えします。白内障の手術は水晶体の中身を入れ替える手術で、白内障の濁りが全くない状態でも、非常に進行した場合でも手術はできます。よく進行してからでは手術が難しいという話がありますが、非常に特殊な状態を除いて、手術は通常の方法で可能です。ただし、通常白内障の手術は10分以内ですが、それよりも時間がかかることもあり、合併症のリスクが少し上がることがあります。
個人的には、白内障の手術は、見えにくくて生活に困るという患者さんの自覚症状があってからした方がよいと思います。それには三つの理由があります。一つ目は、100%成功する手術はないということです。白内障手術の成功率は99%以上ですが、決して100%ではないので、自覚的に困っていなかった方が手術して、万一合併症をおこして見えなくなった場合に後悔が残るということです。二つ目は、白内障手術は一生のうちで必ずしもしなければいけないというものではありません。当院通院中の患者さんの中でも、白内障を手術しないまま亡くなられた方が多数おられます。三つ目は、生活に不自由ない時期に手術して、あまり見え方が改善しなかった場合、手術が失敗したと思われ、手術したことを後悔されることがあるということです。
人の一生で白内障はゆっくり進行していきます。白内障が軽い時期に手術した場合、見え方はあまり良くはならないので喜ばれませんが、その後の一生をよく見える状態で過ごすことができます。それに対して、白内障が強くなるまで待って手術した方は、手術するまでの長年に渡り見えにくい状態を我慢し続けることになりますが、手術した後はものすごく良く見えるようになり、非常に喜ばれるということになります。どちらが良いでしょうか。そのどちらかというよりはその中間あたりが良いのではないでしょうか。
次回からは具体的に、ご自分の白内障の状態を知る三つのポイントを説明していきます。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善