患者さんから、目について何に気を付けたらいいですか?とよく聞かれますので、お答えします。
目以外の体の病気は生活習慣病といわれる、生活を改善することで予防できる病気が多いことがわかっていますので、患者さんのお気持ちはわかります。しかし残念ながら、目の病気については生活習慣が大きく関与しているものは少なく、加齢と体質に関係しているものが多いのが実情です。
そこで、日本人の失明原因の推移をみていただくと、最新のデータでは、1位緑内障、2位網膜色素変性、3位糖尿病網膜症、4位黄斑変性、5位強度近視となっています。病気の発生には生活習慣、体質(遺伝も含む)、加齢の3つの条件が重要ですが、生活習慣の関与の割合によって、3つにわけられます。まず、生活習慣の関与が大きい病気は、糖尿病網膜症です。これは予防することができます。ただし、無症状で経過するので、自覚症状が出た時では手遅れになっている場合があります。次に、生活習慣の影響が少ないものが、緑内障、黄斑変性、強度近視です。これらの病気は、発症には体質と加齢が大きく影響していますが、検診による早期発見や治療をきちんとすることで悪化を最小限におさえることが可能な場合が多いです。最後に、生活習慣の影響が非常に少ないものに、白内障と網膜色素変性があります。これらの病気は紫外線などの注意事項はありますが、残念ながら予防効果は非常に少ないと言わざるを得ません。ということで、目の病気に関する限り(体の病気もそうかもしれませんが)、最も重要なことは無症状の段階で眼科及び内科検診で、早期に異常を発見することです。患者さんによっては、怖いからと受診をためらわれる方が多いのはわかっていますが、無症状で発見された病気はそれほど悪いことにはなっていないと考えていただけるとよいと思います。逆に見えなくなってから受診すればいいと考えている方もおられますが、糖尿病や緑内障などでは、悲惨な結果になる場合もあります。
目にいい生活について、重要な順にあげておきます。この順番に違和感を感じられる方は、メディアの宣伝(企業の利益のため) を過剰に信じすぎているかもしれません。眼科受診を1番にしている点について説明させて下さい。緑内障、黄斑変性、網膜色素変性、強度近視については、目の検査、診察をすることでリスクが高い人と低い人をかなり明確に判別することができます。その上で生活上での気を付けるポイントもかわってきますので、最も重要だと考えています。
1、眼科受診と必要な医療用目薬をきちんとする。
(市販の点眼薬は可もなく不可もない)
2、内科検診で糖尿病、高血圧、脂質異常症、不整脈などをチェック
3、時々自分で片目ずつ方眼紙を見て見え方をチェックする
4、喫煙はX、飲酒もほぼX、運動、睡眠の確保
5、長時間の紫外線はさける(メガネと帽子、黄斑変性と白内障の予防)
6、食事はバランスが一番大事(緑黄色野菜、青魚、ビタミンA,C,E、亜鉛などはよい)
7、ストレスをためない(現状を受け入れる)、心配しすぎない
8、メガネは見えにくければかける:かけなくても目が悪くなることはない(子供の弱視は除く)
9、目は使うことで病気になることはない。(疲れ目、ドライアイにはなる)
電子機器のブルーライトは不眠の原因にはなるが、その他の影響は証明されていない
10、目をぶつける、こする、目に圧がかかる(逆立ち、管楽器、水泳ゴーグル)ことは長時間はさける:強度近視、緑内障の方
11、サプリメントで症状は改善しない。予防を期待できるのは加齢黄斑変性のルテイン、ビタミンC,E、亜鉛、銅、ゼアキサンチンの組み合わせのみ
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善