閃輝暗点は片頭痛の前兆としてよく知られていて、片頭痛がない閃輝暗点を「片頭痛のない片頭痛」の症状と言うこともあります。眼科の外来をしていると、この症状を訴えられる患者さんは多く、頭痛がない場合の方が圧倒的に多いように感じています。この症状は目とは全く関係なく、視覚に関係する脳の神経細胞の一時的な血流障害が原因と言われています。まれに脳の病気の可能性があると言われていて、以前は心配される患者さんを脳外科に紹介していた時期もありますが、この症状に関連した脳の病気が見つかることはほとんどありませんでした。
閃輝暗点の症状は
・突然、黒いキラキラした点が現れる
・ギザギザが動きながら、移動しながら周辺に広がる
・両目に数分~30分くらいで自然になくなる
・見えにくい部分(暗点)がある
・目を閉じていても症状がある
・2週間~月1回起こる
などがあります。
実際に患者さんが訴えられる症状は様々で、キラキラした光が見えた、ギザギザが見えた、一時的に視野が欠けた、一時的に歯車が見えた、変なものがだんだん広がったなど、同じ症状に対する訴えとは思えないほどで、こちらもピンと来ないと別の症状(飛蚊症、光視症や視野狭窄)の検査をしてしまうこともあります。
この症状についてはネットに様々なイメージの画像が出ていますが、患者さんにそれらの画像を見せてもピンとこられず、文章で判断してくださいとお伝えすると、なんとか納得されることが多いようです。芥川龍之介は遺作「歯車」の中で閃輝暗点のことを「銀色の羽根を鱗のように畳んだ翼」と表現しています。私自身もこの症状が時々出ますので、画像処理の得意なスタッフに、画像をつくってもらいました。正直に言って実際の症状とは少し違いますので今後改良を加えたいと思っています。ネットには様々な画像が出ていますので、ご自分の感覚に合うものがあるかもしれません。
閃輝暗点は、片頭痛と同じできっかけになるものがあるとされていて、明るい光、ストレス、喫煙、お酒、睡眠パターンの変化、チョコレートなどの食べ物など多数のものがあげられています。私自身は疲れがたまった週末にほっとした時やチョコレートを食べた後に起こることが多いようです。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善