高齢者の目の病気の中で白内障、緑内障と並んで通院患者さんが多いにも関わらず、圧倒的に知名度が低いものに「黄斑(おうはん)」の病気があります。
黄斑というのは、目の奥の網膜の中心部の直径2mm程度の網膜の色が他と違う部分のことをいいます。この黄斑(網膜全体も含めて)は特殊な機械を使わないと観察することはできません。黄斑は非常に小さい部分ですが、ここが完全に破壊されると視力はメガネをかけても0.1も見えなくなってしまいます。
黄斑の病気には様々なものがあります。最も多いものが、黄斑浮腫(水ぶくれができる)で、次が黄斑上膜(膜がはる)、(加齢)黄斑変性(細胞が障害される)、黄斑円孔(穴があく)などがあります。メディアで取り上げられることが多い黄斑変性が最も知名度が高いですが、実はそれ以外の黄斑の病気の方が多いです。黄斑の病気は馴染みがなく、名前が難しいためか、他院で指摘されたご自分の病名をきちんと覚えておられる方は少ないようです。
黄斑が障害された時の症状は、よくものが「ゆがむ」と言われますが、ものが曲がって見える、ぐにゃぐにゃに見えると言った方が伝わる場合が多いです。その他にも、反対の目に比べてものが大きく見えたり、逆に小さく見えたりする場合もあります。中心部の視野が欠けたり、色が違って見えたりする場合もあります。当院では、黄斑の病気になる可能性のある患者さんには、碁盤の目のような表をお渡しして、片目ずつで時々みていただくようにおすすめしています。両目で見ていると、よい方の目が見えるので、悪い方の目の症状に気付かない場合があります。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善