白内障手術の多焦点レンズは、料金が高いのでよく見えると思われているようなので、説明します。
多焦点とは、ピントが合う距離が1つ(単焦点)ではなく、2つ以上のことを言います。遠近両用メガネも多焦点レンズの一つです。
以前ブログ「調節力と老眼」でお伝えしたように、老眼になるまでは、見たいところにピントを合わせることで、100%の能力でものを見ています。老眼になると、ブログ「遠近両用メガネは目が疲れる?」でお伝えしたように、遠近両用(多焦点)メガネの場合は、遠くと近くはそれぞれレンズの違う一部分を通してみることでピントが合い、狭い視野だけでものを見ています。その視野が狭い分、見え方の質が下がっています。
それに対して、コンタクトレンズと白内障手術の多焦点眼内レンズは、メガネのように視線をずらすことができませんので、別のしくみになっています。例として、遠くと手元の二点にピントがあう多焦点レンズで考えます。レンズには上の図のように多数の境があり、遠くと手元のピントのレンズが交互に入っています。そのレンズを通して、遠くと近くにピントがあった画像が同時に見えており、脳でどちらかの画像を自然に選んで見ることになります。遠くと近くの光量(見え方の明るさ)のバランスが同じだとすると、遠くを見るときも、手元を見るときも、それぞれ50%の能力で見ることになります。つまり、それぞれの見え方の質は落ちているのです。
ですので、多焦点レンズはメガネを使うことを減らすことができる便利なものですが、メガネを使った場合の単焦点レンズよりも見え方の質は落ちるが正解です。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善