今回は、近視の進行予防のために眼科でできることをお伝えします。10年位前までは、私たち眼科医も正直近視はしかたがないと考えていました。前のブログ「近視の進行予防のために家庭でできること」でお伝えしたような効果があるかないかわからないような指導をすることしかできませんでした。現在その家庭でできることにもエビデンス(証拠がある)があることが確認されつつあり、さらに治療と呼べる方法にも可能性があることがわかってきました。その中で有望と思われる方法について説明します。ただしどの方法も今のところ近視の進行予防として国に認可されているわけではありません。
まず目薬です。過去に眼科で処方できる目薬に近視の進行予防の効果があるかもしれないと考えられて、処方されている目薬がありますが、それらには明らかな効果はないことが判明しています。そんな中、近年アトロピンという目薬が注目を浴びています。これは以前から近視の進行予防は期待されていたけど、瞳が開いてしまったり、調節力がなくなって見えにくくなるため、実際に使うことができませんでした。そんな中ある研究で、アトロピンの目薬をかなり薄めて(0.01%)点眼しても、近視の進行予防の効果があることが確認されました。そこでさらに追加研究が行われ、まだ確定ではありませんが、効果が期待できるという状況になっています。さらに最近は0.01%で効果がない場合は、それよりも少し高い濃度0.025%で効果が出る場合があるという研究結果も出ています。
次に有望とされているのが、オルソケラトロジーです。これはハードコンタクトレンズ(コンタクト)を寝ている間だけつけることで、角膜(黒目)の形を一時的に矯正し、コンタクトを外した昼間に近視がない状態をつくる方法です。これを成長期にすると近視の進行予防が期待できることが近年わかってきました。問題点としては寝ている間にコンタクトをつけることで角膜(黒目)に障害が出る場合があることです。この治療は当院では行っておりません。
それ以外には、特殊なレンズ(日本では未発売)や普通老眼の方が使う遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトレンズに近視の進行予防効果が期待されていますが、日本ではまだほとんど実際には使われていないようです。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善