患者さんからの質問でよくあるのが、緑内障の方で、目薬は続けないといけませんかというものです。薬は病気を治したり、症状をよくしたりするために使うものだと思っている方は、使っても症状はかわらないし、病気が治るわけでもないのに、どうして使い続けないといけないのか疑問に思われるようです。
点眼薬については、主に三つの効果があります。一つ目は、ばい菌などの感染による結膜炎や角膜潰瘍などの黒目のきずなどを治す効果です。これは病気が起こった時に目薬を使い、治ってしまえば、目薬を続ける必要がないというわかりやすい効果です。二つ目は、アレルギー性結膜炎やドライアイのように、目薬を続けている間は症状が軽くなるが、やめてしまうとまた症状がぶり返す、いわゆる対症療法といわれる効果です。これらの病気は診断されても、症状が気にならなければ、目薬をさす必要はありません。三つ目は、目薬をしても症状はかわらないが、さし続けることで、病気の進行を予防する効果です。例えば、高血圧症の薬は、飲み続けている間だけ血圧を下げることができ、血圧が下がった状態を長い期間保つことで、脳卒中や心筋梗塞などの命にかかわる病気になりにくい状態をつくるという予防の意味があります。緑内障の目薬も同じように、毎日点眼することで、眼圧を下げ続け、視神経が傷んで視野が狭くなるのを予防する効果があります。そして、目薬の効果があまりない病気もあります。白内障の目薬はさし続けても少ししか悪化を防げません。糖尿病網膜症や加齢黄斑変性は、レーザー治療や目に直接注射をすることでしか治療できません。
ですから、目薬の効果については、いろいろな意味合いがあることを患者さんによく説明して、理解していただきたいと思っています。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善