涙が出る(流涙)というと涙道(涙の通り道)の病気だと患者さんはすぐに考えられるようですが、実際にはいろいろな病気の可能性があるので説明します。
まず涙の流れについて説明します。涙は上まぶたの耳側の涙腺(涙がつくられるところ)から目の表面に出ていきます。まばたきにより目の表面全体を潤わせます。さらにまばたきにより余った水分はまぶたの鼻側の上下にある涙点から涙道を通って鼻に流れていきます。
流涙が起こる病気には大きく分けて、
1,涙が正常よりも多く出る場合
2,目の表面の涙を蓄える場所がなくなる場合
3,涙が鼻に流れていかなくなる場合
があります。
1の涙の量が増える原因で最も多いのがドライアイです。ドライアイなのにおかしいと思われるかもしれませんが、ブログ「風にあたると涙が出るのはなぜですか?」でお伝えしたように、ドライアイは目の表面に乾燥した保護されていない部分ができ、そこに風などの刺激があると、反射的に涙が出ます。さらにドライアイやその他の角膜の病気では角膜(黒目の表面)にキズができると、そのキズを治そうとして涙が出ます。次に多いのはアレルギー性結膜炎です。その症状はかゆみ、充血、異物感、さらさらしたメヤニ、涙などいろいろですが、涙以外の症状が全くないこともありますので、注意が必要です。その次は逆まつげなどで目の表面を刺激して反射で涙が出る場合です。はっきりした逆まつげでなくても、上下のまつ毛がまばたきに伴い互いが当たることで方向が変わり、目の表面に接触して涙が出るというようなこともあります。
2の目の表面の涙を蓄える場所がなくなるのは結膜弛緩の場合です。ブログ「それって本当にドライアイ?<結膜弛緩と眼瞼けいれん>でお伝えしたように、涙は目の表面(角膜・結膜)と下まぶたの縁の間にたまりますが、結膜弛緩ではそこを弛緩した結膜(白目の皮)が占領することで、涙が目の表面にとどまる場所がなくなってしまっているので、涙が目の外にこぼれます。
最後に3の涙が鼻に流れていかなくなる場合です。まばたきによるポンプのようなはたらきにより涙は涙道を通って鼻に流れていきます。そのポンプ機能が弱くなるのが眼瞼内反や眼瞼外反(まぶたがゆるい)や兎眼で、まばたきをしても涙を涙道に流し込む力がなくなっています。結膜弛緩は涙が鼻に流れる出口(涙点)をふさぐので、涙が鼻に流れていかなくなることも原因のひとつです。そして最後にやっと涙道の病気が出てきます。涙道が狭くなったり閉じてしまったりすることで、涙が鼻に流れなくなり、目の外にこぼれるしかなくなる状態です。涙嚢(涙道の途中で袋状にふくらんだところ)より鼻の方でつまればメヤニが出て炎症をおこす場合があります。涙嚢より目側でつまれば涙以外の症状はないことがほとんどです。
このように涙が出るからといって、必ずしも涙道の病気とは限りません。当院では涙道内視鏡を用いたチューブ挿入などの治療を行っていますが、実際には目薬だけで涙がへる方も多いので、簡単にできることから段階的に治療をすすめていきます。
編著 下関市 まつもと眼科 眼科専門医 松本博善